スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

中庸は正義じゃない。


ちょっと前に新聞の広告で見かけてから、
『ウルトラマンと「正義」の話をしよう』という本が気になってしょうがなくなった。
仮面ライダーと同様、ウルトラマンも単純な子ども向けの勧善懲悪の話だと勝手に思っていたので、ウルトラマンにもなにか、シンプルに単純な世界征服から地球を守るという話以上に深いストーリーやメッセージがあるのなら、それに触れてみたいなと思った。
それと、マイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」とタイトルが似ているから、これは絶対にマイケル・サンデルを意識して書いた本だな、どれぐらいサンデルに対抗できる本なのか試しに読んでみたい、という考えもあった。

とにかく、気になったのですぐに買って読んでみた。でも仮面ライダーと違い、ウルトラマンに関しては全くの予備知識なし。


この『ウルトラマンと「正義」の話をしよう』という本は朝日新聞出版から出ていて、著者は神谷和宏という人。この本の元になっているのは、著者が中学校で行っている国語教育の授業。生徒たちにウルトラマンのビデオを見せ、ウルトラマンの正義のあり方について生徒たちと意見交換をする、という内容の授業らしく、本も同じような構成。つまり、実際に正義を考える上で題材になるウルトラマンのストーリーを紹介し、その話の中での正義のあり方やウルトラマンが模索し続ける正義について筆者が解説し、所々で生徒の感想も紹介する。

中学校での授業が前提ということで、分かり易く親しみ易い題材でありながら、悩むウルトラマンを通じて生徒たちと単純には割り切れない正義が持つ苦悩を共有し、考えていくことが出来るというのは面白い試みだと思うし、思った以上に色々なテーマや正義のあり方が提示されていて、面白いないようだったと思う。
実際に読んでみて、自分の中で子ども向けヒーローのイメージがこれで変わったのは確か。

本では7つに分けた、正義を語る上でのテーマがまず示され、それぞれのテーマについて一つ一つの話を具体的に挙げて、論が組み立てられる。ウルトラマンの予備知識もここである程度紹介されるので、その点であまり悩むことはなくてすらすら読める。中学生向けということで、思想を哲学レベルにまで掘り下げることはないので、頭が拒否反応を示すことも多分、あまりないと思う。誰でも読めて、誰でもある程度までは考えることが出来る娯楽作品だと思う。マイケル・サンデルについていくことが出来る人には内容的に薄くて物足りないと思うだろうが、日本人にとっては導入も内容もこれの方が取っ付き易いだろう。

筆者はウルトラマン研究もしているようで、「ウルトラマンは日本的な、多神教に基づく存在」である、時代を経るごとに変化する人間とウルトラマンの関係、等の論は面白い。



ただし、私のこの本の感想としては、本の中で多様な正義を挙げて、それらを皆平等に扱おうとするあまりに、最終的に全ての正義に関して懐疑的にならなければならないという欠点がある。この本、というかウルトラマンの背中を見た上で、じゃあ各々がどういった価値判断を下すべきか、については結論がない。

日本が多神教で、色んな価値観を認めることが出来る、絶対の正義はないという部分までは、考え方としてアリだろう。だけれど、最終的に「中庸がベスト」と筆者が言い切ってしまうのはどうだろうか。苦悩しながらも、たくさんある中から正義を選び取って戦ってきたウルトラマンに対する裏切りなのではないだろうか、と私は思うのだが。最終的に、中間の無難なところを選んでおけばいいよという、無責任な価値相対主義で、無難さを全面に出しているとしか思えない。真剣さが足りないように思う。
し、どちらの正義もとらない中庸、客観しか求めないなら、苦悩もその分なくなるし、同時に自分が胸に持つ主張もない、情報だけになってしまう。そこには、ひとを振り向かせるだけのエネルギーもない。

ウルトラマンの正義とは一体なんだったのか。

スポンサーサイト

| そば屋さんちのふろふき大根 ホーム |

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL:
http://karehausagi.blog38.fc2.com/tb.php/661-8657c689
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザーのみ)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。