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思い出す度に切なくなる。


あの子は今でも同じ仕事をしながら元気に過ごしているだろうか?
なんて考えながら思い出す、ある少女の顔がある。

実際には少女なんて年齢でもあるまい。ましてや、私(若干26歳)からしては。
立場的に見れば寧ろ、彼女の方が経験的にも”上”であるし。

あれは年末、木枯らしが吹く寒空の下。
今の季節には考えられないほど、その頃の夕方7時過ぎは見事に真っ暗だ。
私は夕暮れ時、刻々と表情を変える小さな町並みを眺めた後、整骨院の受付カウンターの中で事務仕事をしていた。そこに現れた彼女だった。


整骨院の扉が開く音で顔をあげた私に彼女は、硬い表情で挨拶をし、名刺を差し出した。
蚊の鳴くような声だった。
院長は施術中ですと彼女に伝えると、では伝えておいてくださいと、私に商品の説明を始めた。
相変わらずのか細い声、こんな寒い中歩いて来て大変だったろうと思う。
きっとまだ新人だ。全体的にぎこちないし、スーツもシンプルな白と黒、顔や髪も着飾っていない白と黒だ。マニキュアとかも塗っていないし、清潔感と言うか、清楚でシャイな印象だった。
カウンター越しに、カウンターの上に広げた資料を使って、伏し目がちに説明を続けていた。


彼女が帰った後に、院のスタッフの女の子が出て来て悪びれもせず言う。
「今の人、帰りました?キモいですよね。」
予想外の台詞が耳を突き抜けて私の脳に刺さった。私は一瞬、言葉を失う。
聞くと、以前も彼女は何度か来院し、商品の説明をしようとしたらしい。
その時の彼女は院の玄関の前で飛び込むのを躊躇う様子で、
暫く中の様子をうかがっていたりしたそうだ。

彼女が入って来たときから彼女に共感を覚えていた私は、
その瞬間から同情をも彼女に感じている。今この時も。
何度も何度も、彼女の打つ向き顔に自分を重ねあわせながら。

あれから半年以上が過ぎ、あの整骨院に彼女は再び現れただろうか。
あの時点で営業職に就いてから何ヶ月ぐらいだったのか、どうして営業と言う仕事に就いたのか。
何も知らないけれど、少なくともあの寂しそうな瞳が、年末の所為だったなら救われるのにな、と思う。
今も昔も、あの人の瞳を思い出すたびに切なくなる。


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「夢ってなんだろうか。」


今日、友達と「風立ちぬ」を見て来た。

上手く行かないことが多くて、悩んでばかりの毎日。
朝、洗濯をして掃除をしてクリーニング屋に行って、そこから思い立っての映画。

ちなみにどうしてこの映画を選んだかと言うと。
ヤフーニュースで、この映画の監督の宮崎駿氏が雑誌インタビューで
現政権に批判的な内容のコメントをしていると読んで、
彼が考えていること、訴えたいことがなんなのか知りたくなったのだ。


零戦を開発した人の物語、しかし戦争は描かないのだとか。
彼がこの映画を通して私たちに何を語りかけるのか?
私が今、言葉や答えに飢えていたからかも知れない、
タイトルもいいし、行ってみることにした。


人によって色々な感想があると思うけれど、私は、見てよかった。
様々なメッセージを受け取ることが出来たし、
これから自分が仕事したりして生きていく上での糧を得た気がした。
この歳になったからかもしれないけれど、私は色々あるジブリの作品の中で、これが一番好きだ。
これか、紅の豚かな。

友達は、あまり上手く飲み込めなくて、台詞棒読みな感じの主人公や
昭和の時代の男女の在り方とかに抵抗を感じたらしく、
子どもに夢を与える路線の映画ではなかったこともあり、あまりしっくり来なかった様子。
だけれどよく見てみれば、ジブリやドラえもんも、アニメって特に映画版とか、
かなり濃厚なメッセージが描かれている。
環境問題や、後ろ向きなノスタルジーや、現代思想に対する批判など、
大人になってアニメ(エンターテインメント)として描かれている痛烈な批判やメッセージを
消化して言葉に出来るようになってから見ると、
子ども向けのファンタジックな世界観の中に、強烈に脈打つ言葉が脳にガンガン響く。
それらの言葉が現実世界に響かないのは、理想より快楽を求める言葉が溢れている性だろうか。



映画の感想に戻る。
映画は全編、明るく落ち着いた昭和時代の風景をベースに、ミュージックも派手でないが可愛らしいものが多く使われ、主人公の性格と相まって全体的にのどかな雰囲気。
が、一方で背景に世界を覆う不穏な空気、世界中が戦争に向けて準備をしていて、
その予兆のように東京を壊滅させる関東大震災など、一貫して肩の力が抜けない緊張感が演出されている。
明日、何が起こっても不思議じゃないような世界で、空に思いを馳せ続けた少年の物語。


この映画を見て、私の中にわき上がった疑問。
「夢って、なんだろうか。」
友達が言うように、主人公の夢は結果として国に戦争の為に利用される。
主人公はそれを拒まない。受け入れて、国の為にという意思があったかは分からないけれど、
零戦を完成させた。
零戦を完成させたことが世界大戦にとってどういう意味があったかは分からない。
というのも、零戦が無くても日本や世界は戦争しただろうし、
零戦よりも遥かに性能がいい戦闘機が出来たとしても、日本は多分戦争に負けただろう。
だから、最後のイタリア人のおじさんが「(零戦を作ったことで)国を焼いた」という台詞には疑問が残った。
とはいえ、主人公、実際に零戦を作った人にもそういう後ろめたさはあったかもしれない。
自分が作った飛行機でみんなが戦争し、ほとんどが撃墜された。

でも彼に、後悔は無かった。無かったと思う。
自分が思い描く理想の、自由に空を飛ぶ飛行機を、世界があっと驚くような飛行機を作ったことで、
零戦の設計に人生をかけ、実際に完成させた、達成感のようなもの。
彼は自分の夢が空を飛ぶことを疑わなかったし、その為の道筋も心得ていた。

自分の夢が、国や誰かに利用されることについても、具体的にいえば人を殺す道具として機能させられることについてはよく思ってなかっただろう。
それでも、自分の夢が、自分が人間である以上、自分の世界だけで完結するものでなく、
自分の本意と違ったとしてもそれで世界が動くと言うことについて彼は感動したかもしれないし、
それで納得したと言うスタンスかもしれない。


彼の生き様を見せつけられた私はじゃあ、夢があるだろうか?
どれぐらい、夢の実現をイメージできていて、そこまでの道のりをイメージできていて、
確実にその道を歩くことが出来ているか。
今の自分の悩みは、その道の途中にある障害を取り除く為のことだろうか。
…などと考えた時に、答えが須くNO!!である気がしてならない。
全く、私の夢は一体どの雲に隠れてしまったのだろうか。



それと、友達がアレルギーを示した、この映画のヒロインの描き方について。
確かに、時代背景を忠実に描写する中で、ヒロインの立場、振る舞いは現代の女性にとっては抵抗あるものかもしれない。
ただ、意図されていたのは「女性は家を守るべき、家に居て旦那を支えるべき」なんてメッセージでは無いと思う。
ヒロインは女性で、主人公との関わりに説得力を持たせて、ドラマを充実させる為にああいった設定になったのかもしれないけれど、
彼女や主人公の友人であり同僚の彼の立ち位置は、「人の夢を信じられる人、支えられる人の存在の大切さ」じゃ無いだろうか。一人だけでは実現が難しい夢があるときに、それを支えて応援してくれる人の存在がどれだけ支えになるか。自分には誇れるような夢が無いかもしれない、と言う人も、誰かの夢を一緒に信じて、それを応援できる人であると言うことがどれだけすばらしいことか。誰かの夢の実現に、どれだけ貢献することか。
そういうメッセージとして受け取ってはどうかな、と私からの提案。


この映画、既に大人気、というニュースも出ているようだけれど、
私も是非人に進めたい、悩んでいる人に見てもらいたい、と思う映画でした。


真っすぐ前に向かって進むことしか知らないトンボに憧れた去年から、
私はどれだけ真っすぐ前を向く力を手に入れたことだろう。
私の目は今も、脇見をしてばかりだ。
夕暮れは毎日訪れると言うのに。


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青い空を眺めていても、変わらない。


雨が続いていた。このじっとりと肌にまとわりついて来る湿気は、不快だ。
こんなにも不快なものだったかと思ったけれど、もしかして去年も思っただろうか?
それとも、季節が正常に巡っているということが分かったなら、
このまとわりつく不愉快さも歓迎すべきものなのだろうか。

雨が降る。川が増水する。ごうごうと音をたてて、濁流となって流れていく。
そういった当たり前のことほどにも、自分の行動や一言は世界を変える力を持たない。
世界はこんなにも常々変化を続けているのに、そこに自分の一言が介在することを許してくれない。
私がここに立ち、叫び続ける意味を実感する日が来るだろうか。
あるいは、私が私の存在の価値を発生させる日が来るだろうか。


久々の晴れ間を喜び、隙間から青い空を眺めたところで、
自分自身に成長は訪れないと言うのに。


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